音楽
第10回:孤高の日本製スタンダード「Roland JC-120」と、デジタル音響設計の現在
真空管アンプの系譜から外れた「標準器」本連載では、Fenderの黎明期から始まり、Marshall、VOXといったブリティッシュ・サウンドの勃興、Mesa BoogieやSoldanoによるアメリカン・ハイゲインの確立、DiezelやBognerら欧州勢の台頭、そしてMatchlessに代表され
第09回:究極のトーンを求めて – Matchless, Friedmanにみる「ブティックアンプ」の世界
ブティックアンプという潮流1980年代後半から1990年代にかけ、ギターアンプリファイアの市場において、新たな潮流が明確に形成され始めた。それは「ブティックアンプ(Boutique Amplifier)」と呼ばれるムーブメントである。これは、FenderやMarshallといった大手メー
第08回:モダン・ハイゲイン戦争 – Diezel, Bogner, ENGLが切り開いた欧州の音響的回答
メタルの深化と欧州の台頭1990年代に入り、ヘヴィミュージックはさらなる細分化と過激化の時代を迎えた。デスメタル、ブラックメタル、インダストリアル、ニューメタルといったサブジャンルが次々と生まれ、それらはギターサウンドに対し、かつてないレベルの「重さ(Heaviness)」と、リフの「分離の良さ
第07回:ハイゲインのもう一つの系譜:Mesa Boogieが起こした“発明”としての革命
ガレージから生まれた第三の潮流前章で論じたMarshall-Soldanoの系譜が、英国アンプのDNAを基盤とした「ブリティッシュ・ハイゲイン」の王道であるならば、それと同時期に米国西海岸で独自の進化を遂げたのが、Mesa Boogie(メサ・ブギー)である。Mesa Boogieの歴史
第06回:80年代メタルとアンプ革命:Marshall JCM800と“モディファイ”文化の勃興
さらなる歪みへの渇望1970年代後半、ハードロックはNWOBHM(New Wave of British Heavy Metal)やLAメタルといったムーヴメントに代表される、よりアグレッシブでテクニカルな「ヘヴィメタル」へとその姿を変貌させつつあった。この音楽的進化は、ギターアンプリファイアに
第05回:英国ロックの多様性:HIWATT、ORANGEにみるMarshall以外の音響哲学
Marshall以外の選択肢前章で論じたMarshallアンプが、1960年代後半から70年代にかけてハードロックのデファクトスタンダードとして君臨する一方、英国の音楽シーンでは、それとは異なる音響哲学に基づいたアンプリファイアが勃興していた。ロックミュージックが大音量化・多様化する中で、すべて
第04回:「プレキシ」と呼ばれた銘機:Marshallアンプとハードロックの音圧革命
大音量化への要求と「壁」の出現1960年代中盤、ロックミュージックの表現形態は、ブルースロックから、よりラウドでアグレッシブなものへと急速に進化していた。コンサートの開催規模は拡大し、ドラムセットの音量も増大する中で、ギタリストは自らの音が埋もれないよう、アンプに対して更なる音量を要求した。
第03回:ブリティッシュ・インヴェイジョン – VOXとMarshall、英国アンプの誕生
ブリティッシュ・サウンドの幕開け1950年代から60年代初頭にかけ、ロックンロールという新たな音楽が米国から英国へ波及した際、現地のミュージシャンたちは米国製Fenderアンプの強烈なサウンドに憧れを抱いた。しかし、当時の英国では戦後の輸入規制の影響により、これら米国製アンプは高価で入手困難な存
第02回:アメリカン・サウンドの原点 – Fenderアンプが確立したクリーン・トーンの系譜
Fenderという「標準」ギターアンプの歴史において、レオ・フェンダー(Leo Fender)とその企業が果たした役割は、単なる一製造者のそれを超えている。Fender社は、エレクトリック・ギターのマスプロダクションを成功させただけでなく、そのギターの音声を増幅するための「標準器」ともいえるアン
第01回:デジタル時代だからこそ知っておきたいギターアンプの歴史と進化
デジタル時代における「実機」研究の意義現代の音楽制作や演奏の場面において、DSP(Digital Signal Processor)技術を基盤とするギターアンプシミュレーターは、便利なツールとして広く普及している。そしてその形態は、DAW(Digital Audio Workstation)上の