物語の始まり:伝説の龍と親友の過ち(1995年)
主人公・桐生一馬は、関東最大の極道組織「東城会」の直系「堂島組」に所属する若きヤクザ。「堂島の龍」の異名で呼ばれるほどの実力者で、近々自分の組を持つことも噂されていた。生には、同じ養護施設「ヒマワリ」で育った親友・錦山彰と、想いを寄せる女性・澤村由美がいた。3人は兄妹のように育ち、固い絆で結ばれていた。
しかし、その運命は一夜にして狂い出すことになる。発端は、堂島組の組長・堂島宗兵が由美をさらい、事務所で襲おうとしたことにある。そこに錦山が駆けつけ、由美を助けるために堂島宗兵を射殺してしまう。現場に駆けつけた桐生は、病気の妹を抱えている錦山をかばうことを決意。「自分が殺した」と罪を被り、警察に出頭。東城会から破門され、10年間刑務所に服役することになる。これが物語の始まりとなる。
第1部:10年後の神室町と謎の少女(2005年)
10年の刑期を終え、桐生が神室町に戻ってくると、そこはすっかり様変わりしていた。東城会では三代目会長が殺害され、その遺言状を巡って内部抗争が始まろうとしていた。さらに、組織の金100億円が何者かに盗まれるという大事件が発覚する。
かつての親友・錦山は、桐生が服役している間に、冷酷非道な「錦山組」組長に変貌していた。彼は100億円を奪い、東城会のトップに立つという野望を抱き、桐生の前に立ちはだかる。
そんな中、桐生は一人の少女・澤村遥と出会う。遥は、行方不明になった母親を探しており、その母親が持っていたというペンダントを身につけていた。遥は「消えた100億円の鍵を握る少女」とされ、東城会の各組織だけでなく、海外マフィアや警察までもが彼女を狙っていた。桐生は、かつて思いを寄せていた女性・由美の面影を遥に感じ、様々な組織から遥を守りながら、100億円事件の真相を追い始める。
第2部:錦山の変貌と明かされる真相
物語を進める中で、なぜあれほど優しかった錦山が冷酷な人間になってしまったのか、その10年間の苦悩が明らかになる。
- 妹の死:高額な手術代が必要だった妹を、金策に奔走したものの助けられず、絶望を味わった。
- 組での劣等感:桐生という大きな存在がいなくなった後も、組の幹部からは能力を認められず、屈辱的な扱いを受け続けた。
- 嫉妬と野心:自分ではなく桐生ばかりを気にかける育ての親・風間新太郎への嫉妬が、次第に東城会のトップを狙うという歪んだ野心に変わっていった。
一方で、100億円事件の真相も徐々に明らかになっていく。
- 遥の正体:遥は、10年前に失踪した由美の娘であった。
- 由美の行方:由美は事件のショックで記憶を失い、「美月」という偽名で神室町でバーを経営していた。遥が探していた母親とは、この「美月(=由美)」のことだった。
- 黒幕の存在:一連の事件の裏で糸を引いていたのは、政治家の神宮京平だった。神宮は由美の元恋人であり、遥の父親でもあった。彼は自身のスキャンダルを隠すため、由美と遥の命を狙い、東城会を利用して100億円を奪おうとしていた。100億円は、元々神宮が東城会と繋がって生み出した裏金だった。
そして、桐生たちの育ての親である風間新太郎が、桐生や錦山、由美の親を殺害したのが自分であるという衝撃の過去を告白。その罪滅ぼしのために3人を育て守ろうとしていた。風間は、桐生たちを神宮から守るために命を落とす。
最終章:親友との決着、そして伝説の終わりと始まり
全ての真相が明らかになり、物語はミレニアムタワーの最上階でクライマックスを迎える。
- 神宮との対決:桐生は、由美と遥を人質に取る神宮と対決し、これを打ち破る。
- 由美との再会と別れ:記憶を取り戻した由美と桐生はつかの間の再会を果たす。しかし、神宮が最後の力を振り絞って放った銃弾から桐生をかばい、由美は命を落とす。
- 桐生 vs 錦山:全ての元凶である神宮を、錦山がナイフで刺殺。由美を失った絶望と、桐生への長年のコンプレックスから、錦山は桐生に最後の戦いを挑む。激闘の末、桐生は親友をその手で打ち破る。
- 錦山の最期:敗れた錦山は、タワーに仕掛けられた爆弾の前で「俺と一緒に行ってくれ、桐生」と呟き、自らの腹を刺して爆弾を起動させ、100億円と共に自爆。親友との悲しい決別を迎えました。
事件終結後、桐生は東城会の跡目を実直な男・寺田行雄に託す。そして、由美の忘れ形見である遥と共に生きていくことを決意し、ヤクザの世界から足を洗い、堅気として生きる道を選ぶ。こうして「堂島の龍」の伝説は一旦幕を閉じ、桐生一馬は「澤村遥の保護者」として、新たな人生を歩み始めるのだった。