第03回:Reaperの初回起動と音を出すための設定

前回の第2回では、DAW「Reaper」をはじめとする、楽曲制作に不可欠なソフトウェア群をコンピューターにインストールしました。あなたのPCには今、強力なサウンドを生み出すための「資材」がすべて揃っている状態です。

そして今回、第3回では、ついにそのエンジンを始動させます。Reaperを初めて起動し、音を鳴らすための最重要設定を行っていきます。オーディオインターフェースやMIDIキーボードをReaperに認識させ、インストールした楽器(VSTプラグイン)を読み込み、記念すべき「最初の音」を奏でるところまでを目標とします。

ここがDTMにおける最初の、そして最も重要な関門です。一つ一つの設定の意味を理解しながら、着実に進めていきましょう。

Reaperの初回起動と評価ライセンス

まずはReaperを起動します。デスクトップに作成された「REAPER (x64)」のショートカットアイコンをダブルクリックしてください。

起動すると、おそらく小さなウィンドウが表示され、Reaperが評価ライセンス期間中であることが示されます。

Reaperは、60日間、全ての機能を無制限に、無料で試用できるという非常に良心的なライセンス形態を採用しています。このウィンドウは起動後5秒ほど待つと「Still Evaluating」というボタンがクリックできるようになるので、それをクリックすれば通常通り使用できます。もしReaperを気に入られたなら、ぜひ正規ライセンスの購入を検討してください。

最重要設定:オーディオデバイスの設定

コンピューターで高品位な音を扱うためには、「どの機材を使って音の入出力を行うか」をDAWに正しく教えてあげる必要があります。この設定が、快適な音楽制作の生命線です。

  1. Reaperのメインウィンドウ上部にあるメニューバーから Options をクリックし、一番下にある Preferences… を選択します。(ショートカットキー: Ctrl+P (Windows) / Cmd+, (Mac))
  2. 設定ウィンドウが開きます。これがReaperのあらゆる設定を司る心臓部です。左側のリストから Audio カテゴリの中にある Device をクリックしてください。
  3. ここに表示される項目を、お使いの環境に合わせて設定していきます。
    • Audio system:ここが最も重要です。Windowsユーザーの方は、必ずプルダウンメニューから ASIO を選択してください。ASIOとは、音の遅延(レイテンシー)を最小限に抑え、安定した動作を実現するための特別な規格です。もしASIOが選択肢にない場合、第1回で解説したオーディオインターフェースの専用ドライバーが正しくインストールされていない可能性があります。Macユーザーの方は、標準で高性能なCore Audioが選択されているため、そのままで問題ありません。
    • ASIO Driver:Audio systemでASIOを選択すると、この項目がアクティブになります。プルダウンメニューから、あなたが使用しているオーディオインターフェースのドライバー名(例: Focusrite USB ASIO, Steinberg Yamaha USB ASIOなど)を選択します。
    • Sample Rate:音のきめ細かさを決める設定値です。特別な理由がなければ、Youtube等の映像系コンテンツと同期させやすい 48000 Hz に設定しておきましょう。
    • Block Size (または Buffer Size):レイテンシーに直接影響する設定です。数値が小さいほど音の遅延は減りますが、PCへの負荷は増大します。逆に大きいと、負荷は軽いですが遅延は増えます。 最初は256 samples または 512 samples に設定しておくのが最も無難です。ギターを録音する際に遅延が気になるようであれば、この数値を小さくしていきます。

VSTプラグインの読み込み設定

次に、第2回でインストールしたドラムやベース、ギターの音源をReaperに認識させるための設定を行います。

  1. 引き続き Preferences の設定ウィンドウを開いた状態で、左側のリストから Plug-ins カテゴリの中にある VST をクリックします。
  2. VST plug-in paths という欄に注目してください。ここに、Reaperが起動時にプラグインを探しに行くフォルダの場所がリストアップされています。
  3. Edit path list… ボタンをクリックし、次に表示されるウィンドウで Add path… ボタンをクリックします。
  4. フォルダを選択するウィンドウが開きますので、第2回で作成した我々のプラグイン用フォルダ(C:\Program Files\VSTPlugins)を選択し、「OK」をクリックします。
  5. パスが追加されたことを確認したら、Preferences ウィンドウの下部にある Re-scan または Clear cache/re-scan ボタンをクリックします。Reaperが指定されたフォルダをスキャンし、新しく追加されたプラグインをリストアップする作業が始まります。

MIDIキーボードの接続と設定

最後に、MIDIキーボードからの演奏情報を受け取れるように設定します。

  1. Preferences ウィンドウの左側リストで、Audio カテゴリ内の MIDI inputs をクリックします。
  2. お使いのコンピューターに接続されているMIDIデバイスの一覧が表示されます。この中に、あなたのMIDIキーボードのモデル名(例: Keystation 49, Arturia KeyStep など)が表示されているはずです。
  3. そのモデル名の上で右クリックし、表示されるメニューからEnable inputを選択します。
  4. 合わせて、Enable input for control messages にもチェックを入れておくと、キーボード上のノブやフェーダーも利用可能になります。
  5. すべての設定が完了したら、Preferences ウィンドウの右下にある Apply ボタンを押し、次に OK ボタンを押してウィンドウを閉じます。

設定の適用と最初の音出しテスト

さあ、すべての設定が完了しました。本当に音が鳴るのか、テストしてみましょう。

  1. Reaperの左側にあるトラックコントロールパネルの何もない領域をダブルクリックします。すると、新しいトラックが1つ作成されます。
  2. 作成されたトラックにある、緑色の「FX」ボタンをクリックします。これは、このトラックにエフェクトや楽器(VSTプラグイン)を追加するためのボタンです。
  3. Add FX to: Track 1 というウィンドウが開きます。左側のリストから Instruments または VSTi を選択してください。
  4. すると、右側のリストに、先ほどスキャンして認識されたプラグインの一覧が表示されるはずです。この中に「Krimh Drums Free (Bogren Digital)」や「Ample Bass P Lite II (Ample Sound)」があることを確認してください。
  5. では、「Krimh Drums Free」を選択して OK をクリックしてみましょう。
  6. Krimh Drumsのリアルなドラムキットのグラフィックが表示されたら準備完了です。あなたのMIDIキーボードの鍵盤をいくつか押してみてください。

ドゴォッ!バシッ! というパワフルなドラムサウンドがヘッドホンから聴こえてきましたか? もし聴こえたなら、おめでとうございます! あなたはDTMにおける最初の、そして最大の関門を突破しました。

おわりに

本日は、Reaperの初回起動から、音を出すための各種設定までを行いました。専門用語が多く戸惑ったかもしれませんが、今日の作業で、あなたのコンピューターは晴れて「楽器」となったのです。あなたは今、音楽を創造するための真っ白なキャンバスと、無限の色彩を持つパレットを手に入れたことになります。

次回、第4回「Reaperの画面構成と基本操作」 では、本格的な制作に入る前に、Reaperの基本的な画面の見方や、トラック、アイテムといった要素の扱い方を学びます。キャンバスを自在に操るための筆の持ち方を覚える回です。

それでは、次回の記事で、本格的な制作の第一歩を踏み出しましょう。

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