前回の第03回では、REAPERで音を扱うために必要なオーディオデバイスとMIDIデバイスの設定を行いました。これで、REAPERから音を鳴らしたり、外部の音を取り込んだりする準備が整いましたね。
第04回となる今回は、いよいよ楽曲制作の出発点となる「トラック」について学びます。REAPERにおけるトラックの役割を理解し、その作成と基本的な管理方法を習得しましょう。
REAPERにおける「トラック」の役割
DAWにおいて「トラック」は、音楽制作の要素を積み重ねていくための基本的な単位です。REAPERにおけるトラックは、様々な役割を担います。
- オーディオ録音の単位:ギターやボーカルなどの生演奏を録音するための入れ物になります。
- MIDI打ち込みの単位:MIDIキーボードや仮想MIDIキーボードで入力した演奏情報(ノートやベロシティなど)を記録するための入れ物になります。
- バーチャルインストゥルメントのホスト:ソフトウェア音源(ピアノ、シンセ、ドラムなど)を読み込み、MIDI情報で演奏させるための場所になります。
- FX(エフェクト)処理の単位:音色を変化させるためのエフェクトプラグインを適用する場所になります。
つまり、楽曲を構成するそれぞれの「音」(ドラム、ベース、ギター、ボーカルなど)は、基本的にそれぞれ別のトラックとして扱われます。
新しいトラックを挿入する方法
新しいトラックをプロジェクトに追加するには、いくつかの方法があります。
- メニューバーから挿入:メニューバーの Track > Insert new track を選択します。これで新しいトラックが1つ追加されます。
- ショートカットキー:キーボードの Ctrl + T (Windows) または Command + T (Mac) を押すと、新しいトラックが1つ追加されます。
- トラックコントロールパネル (TCP) の空きスペースをダブルクリック:トラックコントロールパネルの既存のトラックの下にある空いているスペースをダブルクリックすることでも、新しいトラックを素早く追加できます。
- 複数トラックの挿入:メニューバーの Track > Insert multiple tracks… を選択すると、一度に複数の新しいトラックを指定して追加することができます。これは、例えばドラム用に複数のトラックをまとめて作成したい場合などに便利です。
新しいトラックを挿入すると、トラックコントロールパネル (TCP) と、ミキサーが表示されている場合はミキサーコントロールパネル (MCP) に新しいチャンネルストリップが追加されます。
トラックの基本的な管理
トラックが増えてくると、それぞれのトラックが何の音なのか、どこにあるのかを把握することが重要になります。REAPERでは、トラックを効率的に管理するための機能が用意されています。
- 名前の変更:新しく作成されたトラックの名前は通常「Track 1」「Track 2」のようになっています。どの音のトラックなのかを分かりやすくするために、名前を変更しましょう。トラックコントロールパネル (TCP) のトラック名をダブルクリックすると、編集できるようになります。「Drums」「Bass」「Guitar Riff」のように具体的な名前に変更するのがおすすめです。
- 削除:不要になったトラックは削除できます。削除したいトラックを選択した状態で、メニューバーの Track > Remove selected tracks を選択するか、キーボードの Delete キーを押します。複数のトラックを選択してまとめて削除することも可能です。
- 並べ替え:トラックはドラッグ&ドロップで簡単に並べ替えることができます。トラックコントロールパネル (TCP) で、並べ替えたいトラックを選択し、目的の位置にドラッグします。ドラッグ中に表示される線や枠を見ながら、意図した場所にドロップしましょう。よく使う楽器のトラックをまとめて近くに配置するなど、作業しやすいように整理すると良いでしょう。
TCPとMCPに表示される主要なコントロール
トラックコントロールパネル (TCP) とミキサーコントロールパネル (MCP) には、それぞれのトラックを操作するための重要なコントロールが表示されています。
- ボリュームスライダー:トラックの音量を調整します。上に動かすと音量が大きくなり、下に動かすと小さくなります。
- パンノブ (Pan Knob):音をステレオの左右どの位置に定位させるかを調整します。中央から左に回すと音が左寄りになり、右に回すと右寄りになります。
- ミュートボタン (Mute Button):トラックの音を一時的に消します。ボタンが点灯している間はそのトラックの音は聞こえなくなります。
- ソロボタン (Solo Button):そのトラックの音だけを鳴らし、他のトラックの音をミュートします。ボタンが点灯している間は、ソロがオンになっているトラックの音だけが聞こえます。他のパートを聴かずに特定のパートだけを確認したい場合に便利です。
- 録音待機ボタン (Record Arm Button):そのトラックで録音を行う準備をします。ボタンが点灯している状態が録音待機中です。録音を行うためには、録音待機をオンにする必要があります。
- FXボタン:そのトラックにインサートされているエフェクト(FX)を表示・編集するためのボタンです。
- I/Oボタン:そのトラックの入出力設定を行うためのボタンです。オーディオやMIDIのルーティングを設定します。
これらのコントロールは、TCPとMCPの両方に表示されますが、見た目や操作感が異なります。TCPはトラックを縦に並べて一覧で確認しながら操作するのに、MCPはミキサー卓のようにチャンネルストリップが縦に並び、各トラックのレベルやエフェクトを視覚的に確認・調整するのに適しています。
また、トラックコントロールパネル (TCP) やミキサーコントロールパネル (MCP) の各トラック部分で右クリックすると、トラックの設定に関する詳細なメニューが表示されます。トラックの色を変更したり、高さや幅を調整したりといった様々な設定にアクセスできます。
トラックの高さや幅を調整する
画面スペースを有効に使うために、トラックの表示サイズを調整することも可能です。
- 高さの調整:トラックコントロールパネル (TCP) で、トラックとトラックの間の境界線にマウスポインタを合わせると、上下の矢印が表示されます。この状態でドラッグすることで、そのトラックの高さを変更できます。録音待機中のトラックを高くして波形を見やすくしたり、作業が終わったトラックを低くして画面を広く使ったりと、柔軟に調整できます。
- 幅の調整:トラックコントロールパネル (TCP) と編集エリアの間の境界線を左右にドラッグすることで、TCPの幅を変更できます。トラック名が長い場合などに幅を広げると便利です。
第4回のまとめ
今回は、REAPERにおけるトラックの役割と、その作成、名前の変更、削除、並べ替えといった基本的な管理方法を学びました。また、トラックコントロールパネル (TCP) とミキサーコントロールパネル (MCP) に表示される主要なコントロールについても理解できたかと思います。
次回からは、いよいよ実際の楽曲制作に入っていきます。まずは第05回で、打ち込みの基本となる「MIDIアイテム」と「MIDI Editor」の使い方について詳しく解説します。