フェルマーの最終定理の証明をめぐる数学者たちのドラマを描いた、前作で「哲学的な何か、あと科学とか」を書いた著者による本。
数学がどのように人を動かし人生に影響を与え、どのように論理が構築されてゆくのかについて、最終定理というテーマを通して体験できる内容だ。数学については背景をイメージできる程度に触れられているので数学が苦手でも読みやすくなっている。
哲学についての考察が具体的にあるわけではないが、これらのドラマをもって哲学を感じようという趣旨なのだろう。
連載コラムにはn次方程式の解の公式を求める数学者の物語が書かれている。こちらは本編よりライトな内容で本編同様の趣旨で書かれているので、本編に息切れしそうな読者はこちらをまず読んでも良さそうだ。
本書で孤独と闘い全人生をかけた数学者を俯瞰することで、人生という儚い時間の中で、成果や名声だけにとらわれず、情熱をもって人生を全うすることの価値を感じさせられた。