第02回:Reaperと無料音源の導入

前回の第1回では、DTMの基本的な概念と、音楽制作を始めるために必要な機材について学びました。私たちの旅の「地図」と「装備リスト」は、もうお手元にあるはずです。

そして今回、第2回では、いよいよ実践的な準備に入ります。楽曲制作という戦いに挑むための「武器」、すなわちソフトウェア群をあなたのコンピューターに導入していきましょう。本講座の中核となるDAW「Reaper」と、我々の求めるヘヴィなサウンドを生み出すための4つの強力な無料音源・エフェクトをインストールします。

一つ一つの手順を丁寧に解説しますので、焦らずじっくりと取り組んでください。

インストール作業の前に:VSTプラグインとは?

これから様々なソフトウェアをインストールするにあたり、極めて重要な概念である「VSTプラグイン」について先に解説します。これを知ることで、今後の作業の理解度が格段に深まります。

VSTとは、Virtual Studio Technologyの略称で、ドイツのSteinberg社によって開発されたソフトウェアの規格です。

これを理解するために、ReaperのようなDAWを「レコーディングスタジオ本体」だと想像してみてください。スタジオにはミキシングコンソールや録音機材はありますが、楽器やエフェクターがなければ音楽は作れません。

VSTプラグインは、その「スタジオに持ち込むことができる仮想の楽器やエフェクター」のようなものです。DAWという母艦に、世界中のメーカーが開発した様々な機能を追加し、サウンドの可能性を無限に広げることができます。

VSTプラグインは、大きく分けて2種類あります。

  1. VSTインストゥルメント (VSTi):仮想の楽器です。シンセサイザー、ドラム、ベース、ギターなど、MIDI情報(演奏データ)を元に音を鳴らします。今回インストールする「Krimh Drums Free」や「Ample Bass P Lite II」などがこれに該当します。
  2. VSTエフェクト:音を加工するためのエフェクターです。音を歪ませるディストーション、音の響きを加えるリバーブ、音質を調整するイコライザーなどがあります。今回導入する「Amped Roots Free」は、ギターの音をアンプで鳴らしたようなサウンドに加工するエフェクトです。

準備:VSTプラグイン用フォルダの把握

後の管理を容易にするため、VSTプラグインが保管されるフォルダをあらかじめ理解しておくことを強く推奨します。

  1. お使いのPCのCドライブを開きます。
  2. VSTプラグインは、Program Files\Common Files フォルダの中に作られることが多いです。(例:C:\Program Files\Common Files\VST3)
    • Macユーザーの場合は、 /Library/Audio/Plug-Ins/VST や VST3 といった場所に自動でインストールされることが多いですが、同様に管理の考え方を持つことが重要です。

これを理解しておくことが、後々プラグインが増えてきた際の整理やトラブルシューティングに絶大な効果を発揮します。

ソフトウェアのインストール手順

それでは、以下の5つのソフトウェアを順番にインストールしていきましょう。

1. DAW:Cockos Reaper

我々の音楽制作の中心基地となるソフトウェアです。

  • 公式サイト:https://www.reaper.fm/
  • 手順:
    1. 公式サイトにアクセスし、ページ上部にある「DOWNLOAD REAPER」をクリックします。
    2. お使いのOS(Windows / macOS)に合わせて、「Download REAPER vX.XX – … 64-bit」と書かれたボタンをクリックし、インストーラーをダウンロードします。
    3. ダウンロードしたインストーラー(reaper…_x64-install.exeなど)をダブルクリックして実行します。
    4. 基本的にインストーラーの指示に従って「Next」や「I Agree」をクリックしていけば問題ありません。途中でインストールするコンポーネントを選択する画面が出ますが、そのままで大丈夫です。
    5. インストールが完了したら「Close」でウィンドウを閉じます。まだ起動する必要はありません。

2. ドラム音源:Bogren Digital Krimh Drums Free

リアルでパワフルなメタルドラムサウンドを鳴らすことができる音源です。

    • 公式サイト:https://www.bogrendigital.com/products/krimh-drums-free
    • 手順:
      1. 公式サイトにアクセスし、「GET FREE EDITION」のボタンをクリックします。
      2. メールアドレスを入力し、「SUBMIT」をクリック。入力したメールアドレス宛に届く確証用メールのリンクをクリックして確証を実行。
      3. 確証すると登録したメールアドレス宛に、無料で利用するためのFree Codeの情報と、INSTALLATION INSTRUCTIONSへのリンクが送られてきます。
      4. メールのリンクからINSTALLATION INSTRUCTIONS にアクセスし、説明に従って音源を管理するためのソフト「NATIVE ACCESS」をインストール。
      5. 「NATIVE ACCESS」を起動し「Add Serial」から先に入力しているFree Codeを入力しKrimh Drumsをインストールします。

    3. ベース音源:Ample Sound Ample Bass P Lite II (ABP Lite II)

    定番のエレキベースであるプレシジョンベースを再現した、扱いやすい音源です。

    • 公式サイト:https://www.amplesound.net/en/pro-pd.asp?id=19
    • 手順:
      1. 公式サイトにアクセスし、画面上部の「Download」のリンクをクリックします。
      2. Free Software 内の Ample Bass P Lite のリンクをクリックします。
      3. プラグインのダウンロードページに飛ぶので、お使いのOS(Windows/Mac)のダウンロードリンクをクリックします。
      4. ダウンロードしたインストーラーを起動し、ライセンス契約に同意してインストールを進めます。

    4. ギター音源: Unreal Instruments METAL-GTX

    7弦ギターのサウンドをシミュレートした、メタル特化型のギター音源です。

    5. アンプシミュレーター: ML Sound Lab Amped Roots Free

    ギター音源(METAL-GTX)の音を、本物のギターアンプで鳴らしたような迫力あるサウンドに加工するエフェクトです。

    • 公式サイト:https://ml-sound-lab.com/products/amped-roots
    • 手順:
      1. 公式サイトにアクセスし、製品をカートに入れて無料の購入手続きを行います。(アカウント作成が必要です)
      2. 手続き後、アカウントページからインストーラーをダウンロードします。
      3. インストーラーを起動し、指示に従ってインストールを進めてください。

    おわりに

    お疲れ様でした。これで、私たちの楽曲制作に必要な全てのソフトウェアが、あなたのコンピューターの中に揃いました。DAWという「スタジオ」、そしてドラム、ベース、ギターという「楽器と機材」。これらを自在に操ることで、頭の中にあるサウンドを現実のものとすることができます。

    まだアイコンを眺めるだけで、音を出すことはできません。しかし、今日の作業は、家を建てる前の整地と資材搬入にあたる、非常に重要な工程でした。

    次回、第3回「Reaperの初回起動と音を出すための設定」 では、いよいよReaperを初めて起動します。そして今回インストールしたプラグインたちをReaperに認識させ、オーディオインターフェースやMIDIキーボードを設定し、記念すべき「最初の音」を鳴らすところまでを解説します。

    それでは、次回の記事で、創造の扉を開きましょう。

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